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事業者の皆様(オーガニックBussinessニュース)

2012/04/27

週刊新潮『発がん性物質も発生という危なすぎる「オーガニック野菜」』の記事に抗して

週刊新潮2012年5月3―10日号にオーガニック野菜は危険だという趣旨の記事が出ました。1ページほどの短い記事ですが、あまりにデタラメで、このままではオーガニックの沽券に関わるので、反対意見を表明しておきたいと思います。
思い起こせば1年半ほど前、他の週刊誌でも同様の記事が掲載されました。当時は講談社が発行する週刊現代で、タイトルは『本当は危険な有機野菜』。さっそく同社に抗議文を出したのですが、編集部は記事の内容に対してノラリクラリかわすばかりで話になりません。そんな経験があるので、今回はHP上で新潮社に抗議しようと思います。
さて、記事全文はPDFで掲載します。その中に私が※1〜6まで印を付け、JONAのコメントを記載します。

※ 1:「有機野菜とは(中略)野菜に農薬が確実に残留していない点が消費者に受け入れられる理由でしょう」。そう解説するのは佐賀大農学部の染谷孝准教授。
〔JONAコメント〕有機野菜は農薬残留ゼロを目指していますが、現時点で「確実に残留していない」というのは言い過ぎです。そもそもオーガニックの目標は、化学物質全般の使用量を減らし、循環を基調とした持続可能な社会を構築することにあります。そういう社会が実現すれば、農薬残留は限りなくゼロに近づくでしょうし、私たち人間を含む全ての生き物が健やかに生きられるわけです。

※ 2:「過去には無農薬で育てたはずの有機野菜から、除草剤・クロピラリドが検出されたこともありました」。
〔JONAコメント〕日本では無許可の農薬クロピラリドは、2009年末に全国5県の野菜9件から検出されました。しかし当時、有機野菜から検出されたという話は聞いたことがありません。おそらく誤解だと思われます。誤解の元は、同年12月7日号の『Asahi.com』という雑誌のクロピラリドに関する記事で、ここでは輸入飼料に含まれるクロピラリドが牛糞を介して堆肥に混入する危険性が指摘されています。おそらくこの記事を読んで、「堆肥=有機栽培」と誤解あるいは記憶違いしたのだと思われます。もし、有機野菜からクロピラリドが検出されたという確実な情報をお持ちの方がいましたら、ご連絡ください。直ちに本稿を修正します。

※ 3:「堆肥の原料は家畜の糞や下水汚泥、食品廃棄物などで(後略)」
〔JONAコメント〕有機JAS規格では、堆肥原料に下水汚泥を使うことはできません。

※ 4:「堆肥の原料にもよるが、病原菌が完全に死滅するまで発酵させるには最低でも2〜3ヵ月は必要」
〔JONAコメント〕このコメントは、佐賀大学農学部の染谷孝准教授となっていますが、おそらく記事の執筆者が、適当にコメントを端折ったと思われます。堆肥を作る有機農家ならば誰でも知っていることですが、菌を死滅させるのに重要なのは60℃以上の発酵熱であり、期間は熟度をあげるために必要なのです。どうもこの辺りが混乱しているようです。ちなみに堆肥の熟成期間(一般的には半年以上)は、硝酸態窒素の問題から重要です。

※ 5:「韓国では(中略)日本にはまだ検査を義務付ける法律はありません」
〔JONAコメント〕佐賀大学農学部の染谷孝准教授は、病原菌の検査手法を研究しているらしく、堆肥に含まれる菌類の検査制度の法制化を望んでいるようです。染谷氏が法制化を望むのは結構ですが、そのために「堆肥を使っている有機農産物は危ない」というのは、根拠のない扇動と言わねばなりません。染谷氏の研究室で堆肥30点以上を分析して「一部から大腸菌やサルモネラ菌が検出された」とありますが、いったい何点からどれくらいの値がでたのかまったく示されていないのも気になります。
【2012.5/22補足】
「外部から過去の研究論文の情報提供があり、それによると九州各地でサンプリングされた完熟堆肥29検体のうち11検体から大腸菌が、また12検体のうち2検体からサルモネラ菌が検出された。
(龚春明氏 論文「堆肥・土壌における細菌群集の解析および大腸菌など糞便汚染指標菌の残存性に関する研究」より)」



※ 6:「未熟な有機肥料を大量に使えば、硝酸態窒素を多く含んだ野菜ができてしまう」(中略)たとえ無農薬でも肥料を多く使う有機野菜には注意が必要だ。
〔JONAコメント〕有機質肥料か化成肥料かに関わらず、肥料を多投入すれば硝酸態窒素の問題はあります。ですから、肥料を多く使うのが有機農家固有の問題というような表現は、不適切と言わねばなりません。また、私たちJONAのオーガニック基準では、硝酸態窒素の問題に配慮して作物ごとに窒素投入量の限界を定めています。


最後に。
私には、この記事を書いた人がいったい何を言いたかったのかが分かりません。他の食品と比較して安全性が高いといわれるオーガニック農産物を、「危険だ」と言ってみて、世間の耳目を集めたかったに過ぎないのではないでしょうか?
そして何より残念なのは、マスメディアがオーガニックの意義や目的をまったく理解できていないことです。これは、オーガニックを推進しようとする私たちにも責任の一端はあるのかも知れません。
JONAは今年、設立20周年を迎えます。これを機に、世間に対してもっと広く・深く、オーガニックをアピールしていきたいと思っていますので、皆さんのご支援を宜しくお願い致します。

日本オーガニック&ナチュラルフーズ協会 理事長 高橋勉

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