オーガニックの論文などの紹介

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当コーナーは、オーガニックに関する学術研究や論文を世界中から集め、リンク先を一覧で紹介しています。
ほとんどが英文なうえ、かなりディープ。
まさに、オーガニックアドベンチャーを楽しむにはもってこいです。

 Q&Aでオーガニックを知ろう!は、オーガニックに関しての質問に対して簡単な答えを記しています。その答えは、それぞれ長年に亘る有機農業についての経験や科学的な研究成果に基づいています。このコラムでは、実証分析に基づく科学的な文献をできるだけ順次紹介していきたいと考えています。
 
 現代は世界的な規模で、食糧不足の危機、地球温暖化、自然環境の破壊、先進国における生活の質の低下など様々な問題に直面しています。これらの諸問題に対して、有機農業がどのような貢献をすることができるのかを幾つかのトピックを取り上げたいと考えています。 まず始めに、有機農業では、世界の食糧を賄えないのではないかと言う疑問に答えます。 次回には、有機農業、有機食品の環境や健康に与える影響についての全般的な話を紹介する予定です。続いて、有機農産物と慣行農産物の栄養価の比較や遺伝子組換え技術の評価などを順次取り上げて行きます。
 皆様には、このコラムを足がかりにして、オーガニックをより良く理解していただき、私たちの活動に参加していただくことを願っています。

テーマ

テーマ別文献紹介

有機農業は世界の食糧をまかなえるのか?

現在の世界の食糧生産は、主に農薬・化学肥料を使用し、大規模・単一作物・大量生産による生産に依存しています。
 現在世界ではアフリカを中心に約10億人に人々が飢餓に苦しんでいますが、この原因は世界の総生産量が不足しているのではなく、先進諸国の過剰消費と廃棄される食物、増大する畜産物の生産と過大な消費、富の偏在と流通機構の不備などが大きな原因と考えられております。
 これらの問題は各々解決しなければならない課題ですが、一方現在の慣行農業を有機農業に転換すれば、世界の食糧生産量が減り、現在以上に困難な状況になるのではないか?有機農業は世界の60億人強の食糧を賄えるのか?と言う疑問が長い間議論されてきました。
 有機農業は環境に良さそうだが、その生産力は非有機生産(現在世界の主流である化学肥料や農薬を使った慣行生産)より劣るのかどうかについては、長年に亘り様々な研究がされてきました。
 有機農業の生産性と慣行農業の生産性の比較は、世界の食糧問題を考える上で、大変重要な課題と考えます。
 この文献紹介コラムの先ず始めとして、私達JONAが推進している有機農業の社会的意義のうち、有機農業の生産性に関する論文を紹介いたします。
【1】有機農業は世界の食糧を賄うことができるか?
UC, Berkeley(カリフォルニア大学バークレイ校)のヴァシリキオティス(Christos Vasilikiotis)博士は、これまでの幾つかの研究成果を総括し、発表しています。

その中から、有機農業は慣行(非有機)農業より生産性が高く、有機への転換こそ農産物生産の維持、増産に資することを論じた部分を紹介します。
博士が引用した研究は次の通りです。

■UC, Davis(カリフォルニア大学デービス校)の研究最初の8年間では、全ての栽培物で有機生産は慣行生産に匹敵し、トマト、ひまわり、とうもろこし、豆では有機がより多い収穫量であった。
その土壌中の炭素量と貯蔵された栄養成分は多く、長期的に肥沃度を維持するためには重要なことである。

■ローデール研究所の大豆の研究1981年に開始した農業システムの試験では、大豆と、とうもろこしを有機と非有機で栽培し比較した。
有機農業の生産性は慣行農業と同じくらい。
但し、1999年の水不足の時には、有機は慣行の倍近くを収穫した。有機の土壌は水分を多く保持し、有機質も高い。

■その他、英国Rothamsted試験場のBroadbalk実験場、中西部6大学の有機穀物と大豆生産の報告が書かれている。

以上の考察の結果、有機農業は害虫による損失や収穫の劇的な減少をもたらさないことは明白である。
従来農業産業やアカデミックは、有機は収量が減じると我々に信じさせようとしていたが、化学合成された農薬なしに収量の損失を防ぐことが出来ること、有機的、農業環境維持的農業は継続的に土壌の肥沃度を増加させ又表土の流出を防ぐが、慣行農業はその反対の影響を及ぼす。
有機農業への転換だけが農産物生産を維持し、また、増加させることが出来るでしょう。


 結論として、博士は「今や、有機対慣行農業の比較は不要であり、有機農業方法を改善するための研究を直ぐにでも行うべき」と論じています。

 なお、この論文には、小規模農家の役割、有機農業の収益力、有機農業の補助金制度、GMO農業の失敗などが論じられている。
                          出典:Can Organic Farming “Feed the World?”
                          著者:Christos Vasilikiotis; UC Berkeley
【2】緑の革命の再生―The greening of the green revolution  
ミネソタ大学デヴィッド・ティルマン著
「従来型の集約農法と比較したとき、「有機」農法には、土壌の肥沃度を高め、環境へ与える害も小さいと言う長所がある。問題は収量だが、今回、有機農法によっても、集約農法にひけをとらないだけの収量が可能であることが分かった。」ことを英国の科学誌のNature(ネイチャー誌)に発表した。
ドリンクウオーター氏達の3つの実験結果の総括報告であり、収量比較、窒素量、土壌中の炭素量などについての考察が記されている。

 この論文の日本語訳は、「知の創造―ネイチャーで見る科学の世界」の53〜56頁(出版社;徳間書店)に記載されている。
この1999年版は、Natureが選んだnews & Viewsの翻訳で1999年10月に初版出版されている。科学一般、バイオテクノロジー・医学、生物、生物の進化について1998年のNatureから選ばれており、科学の最前線について知りたいと思う人々のために翻訳されたと責任翻訳の竹内薫氏による、あとがきに書かれている。
【3】UNCTADスパチャイ事務局長のスピーチ
ITF会議(ジュネーブ)国連関連諸機関高官出席の公開会議2008年10月にてITF会議(有機農業の国際的調和と同等性を確立するための国際的な作業部会)で、UNCTAD(UN Conference on Trade and Development国連貿易開発会議)の事務局長は、世界は有機農業生産に注目しなければならないと話した。
IAASTD(The International Assessment of Agricultural Knowledge, Science and Technology for Development)の2008年春の報告の有機農業の環境評価や生産力評価に基づいた提言であった。

      スパチャイ氏のスピーチ;翻訳 三好智子、監修JONA
「世界の農業生産方法は過去数十年間どちらかと言うと無視されてきました。
しかしこの会議は、農業生産方法が国際的な様々な政策討議の中心課題になってきた大切な時期に開催されています。
 ここ数ヶ月間の食糧価格の高騰により、発展途上国での悲惨な農業の状態に注目が集まりました。そこでは高価格に対応して農業生産を増加させることが出来ませんでした。
 数年に亘る農業投資の減少、不十分な農業支援や先進国からの食糧援助の減少などにより、発展余剰国特にアフリカなどの国の農業を弱体化させました。
更に石油価格高騰により化学肥料や化学資材の費用が上がり、状況を悪化させています。
 今年初め、IAASTD(開発のための農業の知見・科学・技術の国際的評価委員会)は、社会の崩壊や環境破壊を避けながら、世界が人口増加や気候変動に対応して、貧困や飢餓を乗り越えていくためには、農業のあり方を劇的に変える必要があると結論づけました。
 私たちは有機農業がこれらの問題を解決する最良の選択であると確信しています。」

『オーガニック食品の健康効果は一般食品と変わらず』=英国調査は本当か???

2009年6月、ロンドン大学研究チームは英国食品安全基準局(FSA)の委託を受け、オーガニック食品(以下、有機農産物と有機加工食品を総称する)の栄養価と健康への効果に関し調査を行い発表しました。
 その結果は、「オーガニック食品は一般食品と栄養価は変わらない、また特に健康に良いとはいえない」というもので、研究チームは、「消費者に正確な情報を与えることが目的で、オーガニックに反対しているわけでもないし、賛成しているわけでもない」と説明しています。
 このニェースは欧米の通信社や共同通信、時事通信を通じて日本でも報道されましたが、オーガニックは価格ほどの価値があるのかと言う否定的な報道になっています。これに対し、オーガニックに長年努力されてきた十数名の会員の方々からこの調査発表についてJONAとしてどう考えるかとの質問が寄せられました。

 オーガニックに携わる人々には常識的なことと思いますが、欧米の有機団体の意見と併せてこの報道に関するコメントをします。
【1】まず始めに、この調査は有機農業や有機加工生産が担っている多面的な特質を無視し、栄養価の一部分だけを調査しているに過ぎないことが決定的な間違いであると考える。

 有機農業生産は、水(表層水、地下水)土壌の汚染を防ぎ、生物多様性を維持し、人だけでなく動物・植物を化学物質の汚染から守る。さらに、最近世界で注目を集めている地球温暖化緩和には炭酸ガスを土中に吸収することによって大きな貢献をしている。
 一方、有機加工食品の生産は、自然な添加物や加工助剤しか使用しないなど人体へのマイナスの影響を排除するために、多大の努力をしている。
 また、アフリカ、アジアにおける小農家の有機農業生産の振興は、食糧危機を救い出す一番強力な政策であり、南北の貧富格差を緩和することによって、世界平和を実現しようとする国連やその下部機構のFAOなどが取り上げている政策である。

以上のような点を踏まえ、有機農業や有機加工生産はその重要性を包括的(ホリスティック)に理解され評価されなければならない。
【2】諸外国の有機の団体や研究機関も、この調査の欠点を指摘している。
 主要な論点は、FSAの調査がオーガニックの栄養素と人の健康という狭い視野で行われたこと、およびその調査も最近の重要な研究発表を反映していないことを指摘している。
 さらにオーガニックが、優れて環境共生型であり、自然の再生産、農業の持続性向上、生物の多様性の維持、地球温暖化緩和策、有機農業による最貧国の食糧危機と窮乏からの救済策などを目標にしていることを指摘している。


(1)英国のSoil Association(土壌協会)の意見(7月29日発表)

a)この研究者達の結論には失望した。現存するオーガニックと一般食品の違いに関する多くの研究成果を無視している。
b)差異は無いと言いながら、「オーガニックには有益な栄養素がより多く含まれる」例えば、蛋白が12.7%, ベータカロチン:53.6%, フラボノイド:38.4%, フェノール化合物:13.2% など、更に有機の肉と酪農産品には不飽和脂肪酸が2.1%から27.8%多く含まれているということも、この調査に含まれている。
c)FSAは今年4月に終了した欧州委員会の1800万ユーロのファンドによる大規模な調査結果を含めていない。その調査結果では、有機農産物には栄養的に望ましい成分(抗酸化物質、ビタミンなど)が多く、栄養的に望ましくない成分が少ないなどの報告がある。
d)長期間にわたる有機と一般生産物の健康効果の比較は未だ無いが、2006年に殺虫剤が長期的な健康に与える影響は、免疫機構に重大な障害をひき起こしたり、癌、不妊、新生児障害、神経系への打撃などを起こす危険性を指摘している。

(2)ロデール研究所

この研究所の最高執行役員のラサル氏が米国のHuffington Post紙(7月30日)にFSAの記事のコメントを投稿した。
a)50年前からの5万の論文から55を選んでいる。幾つかの研究は国家による有機基準が定まる前のものである、不幸にもオーガニックの強さを示す最近の研究を含んでおらず、オーガニックに優位性がある分野(抗酸化能力など)を看過している。コメントの内容はほぼSoil Ass.と同じである。
b)ロデール研究所は30年にわたり比較研究してきてが、2008年には地球規模の危機に対処するために有機農業には再生能力があることを説明する内容を発表した。
 オーガニックの生産方法は、土と水の中の殺虫剤や除草剤を少なくすること、良好な土地管理をすること、食品が地球・人々と生物多様性に対して長期的に障害を及ぼす危険をゼロもしくは僅かしか持たないことに対して責任を負っている。
c)個々の栄養素が人体の健康にどのように役立つかを正確に知ることは複雑な評価が必要で、一人ひとり、個人の生体反応、総体的な食事法と健康度、さらに栄養素の消化方法が異なっている。有機と一般の栄養特性は、品種、土壌条件、農場管理、その他生育システムの影響があり、さらに複雑な水準が必要である。現段階では、最善の研究に基づく答えは、長期間やっている農場で、十分に管理しながら二つの実験をし、その作物から特に選んだ栄養分の比較だけに限定される。

(3)その他
a)IFOAM (08/10/09)の発表
 FSAの調査は殺虫剤の問題を避けており、健康に関して大変狭い視野しかない。
b)The Organic Center(TOC米国)の発表
 TOCは、2008年に有機農産物の栄養素が優れていることを発表した。今回の英国FSAの調査報告を詳しく分析し、その欠陥を指摘している。オーガニックの健康については、IFOAMのホームーページをFSAの記事については、The Soil AssociationのホームページとOrganic Centerのホームページを見るように紹介している。
c)Times Online, The Globe Lifeなど一般消費者の意見が掲載されているが、このFSAの記事を読んで、オーガニックに失望したとか、余り価値が無さそうなのでもう買わないと言う意見はない。「作る時に何を投入しているのか?それは自然のものなのか?が問題だ」と素直に考える意見もあった。


2010年8月に公開されたフランス映画「未来の食卓」の初めに、子供が「オーガニックって、自然よ」「美味しいよ」と言う場面があったが、理屈抜きにオーガニックが理解される世の中になればと願っている。
                                               JONA K.M.記

世界の有機農業の発展について−1 〜〜世界各地で有機農業はどのように拡がっているのか?〜〜【序文】

序文
 3月11日の東日本大震災によりでご親族、ご友人を亡くされた方々、住居、店舗、田畑、工場、倉庫など生活の基盤に甚大な影響を受けた方々、さらに放射線汚染により被害を蒙られた方々に心からお見舞い申し上げます。

 地震は天災とはいえ、原子力発電所の未だに出口の見えない事故により、現代の最先端技術の脆さを図らずも強く認識しなければならないことになりました。
現代の先端技術は未開の分野を開き、極めて生産性が高いことは賞賛されるべきかも知れませんが、外部不経済や周辺分野への配慮あるいはその技術による自然や社会への影響の考慮が十分でないことが大きな盲点となっています。


これはハイテクノロジーを駆使する工業生産のことだけではありません。
現代の先進諸国の食品は、米国がリードしてきた現代農業、即ち主に農薬や化学肥料を使用し、大規模農場での単一作物の農産物や工場的生産の畜産物と、それに呼応して食品添加物、保存剤などを使用した大量生産による加工食品が主流となっており、人々の健康な生活や自然環境への脅威となっています。
更に遺伝子組換作物(GMO)が次の世代にどのような影響(自然生態系への影響や社会基盤への影響など)を与えるのか十分に検討されないまま推進されていることも大きな問題です。


 世界で飢饉に直面している数十億人の食糧の確保が国際社会の大きな問題であることを先進国日本の我々も看過することは許されません。
その原因は世界の総生産量が不足しているのではなく、先進諸国の過剰消費と廃棄される食物、増大する畜産物の生産と過大な消費、富の偏在と流通機構の不備などが大きな原因とも考えられております。


 アフリカ、インド、中南米などで化学肥料や農薬に頼らずない有機農業をIFOAM(国際有機農業運動連盟)が推進してきましたが、その成果はWHO、FAOなど国連の関連機構も認めるようになりました。


 有機農業は、欧米では1990年代より盛んになってきていることは周知のことと思いますが、アジアの諸国でもここ数年来、力強く発展してきています。
残念ながら、日本の有機農業は減じてはいませんが、微々たる伸びしか示していません。


その理由はどうあれ、世界の有機農業は現時点でどのように広がっているのかを本稿で紹介し、日本の現状とのギャップを理解していただきたいと思います。

(出典は主としてIFOAMとFiBL(スイス)の共同調査報告書(The World of Organic Agriculture)です。)
本稿の概要は次の3章を予定しています。

犠蓮\こΔ陵機圃場
蕎蓮\こΔ陵機食品市場
珪蓮\こΤ胴颪陵機食品制度

今回のホームページでは、世界各地域の有機的管理がされている農業用地(圃場)の面積、作物別の利用方法などを中心に報告します。なお、本稿では、有機農業の社会的意義(社会貢献)、有機農業の技術、有機農産物の特徴などについては触れておりません。そのようなトピックスは別に報告いたします。


順次更新いたしますので、お楽しみに。

世界の有機農業の発展について−1 〜〜世界各地で有機農業はどのように拡がっているのか?〜〜【第一章 世界各地域の有機圃場とその作物】

世界各国のオーガニック理念に基づく基準や基準設定の理由を比較検討すると、幾つかの基本的な要素に集約することが出来ます。

有機農業とは土づくりの重視、化学肥料・農薬、食品添加物などの使用禁止、生物多様性の保持、自然環境の有効利用、GMO技術や放射線の使用禁止、計画に基づく有機生産、生産諸条件の確認、流通過程での有機一貫性の確保などです。
1. 世界の有機圃場
IFOAM とFiblが2009年の年末までに世界160カ国から集めた有機圃場(有機転換中を含む)の調査結果を本年2月に発表しました。2009年の全世界の有機圃場面積は、3,720万haです。

注)有機圃場とは有機的な管理がされている圃場のことで、認証制度のない国や地域が多いため、認証の有無は言及していない。世界各地で統一した方式に基づく公式な有機圃場面積が推計されていないので、各地域、各国から信頼性の高い情報を集め、FiblとIFOAMがチェックして纏めたものです。

図表のダウンロードはこちら

*文章と図表を併せてご覧になりたい方はJONAブログをご覧下さい→JONAブログへ
【1】過去10年間の世界の有機圃場面積の増加(図表1,2)

1)直近の2009年末の面積3720万haは、統計を取り始めた1990年時の1100万haの3倍以上、2001年の1740万haの2.14倍になりました。停滞した2005年を除き、有機圃場が世界で広がってきていることを示しています。2009年は2008年より200万ha(6 %)増加しました(図表1)。

2)各地域の有機圃場の経年的推移は、欧州、北米、アフリカが継続的に増加しており、オセオニアが2004年以降やや停滞気味、中南米は2002年から2006年の間は減少しましたが、その後急激に有機圃場を拡大している。アジアも有機農業が普及してきています(注;アジアの2004年の400万haは、異常に高い数値であり、推計方法に問題があったためと思われます。)(図表1)。

3)前年と較べて、最も高い増加率を示したのはアフリカで、19.7%。 面積で最大の増加をしたのは欧州で996,000haでした。アジアは230,850 haの6.9%の増加でした(図表1)。

4)世界と日本の有機農業の経年的増加を2001年を起点としてグラフ化すると、2009年は世界で2.14倍に対し、日本の有機農業は増加してはいますが1.7倍に留まり、世界の趨勢よりも停滞していることを如実に示しています(図表2)
(日本の有機圃場の推移は、農林水産省へ報告されている国内の有機JAS格付け数量の推移で代替しました。圃場面積は2008年まで集計されていないためです。)
【2】地域別の有機圃場面積(図表3,4,5)

・2009年末時点の地域別の有機圃場面積は、オセアニア(主にオーストラリア、ニュージーランド)が1220万ha (全体の32.6%)で1番多く、次いで欧州が930万 ha (全体の24.9%)、中南米が860万ha(全体の23.0%)、アジアが360万ha(全体の9.6%)、北米が270万ha(全体の7.2%)、アフリカが100万ha(全体の2.8%)です(図表3)。前年と較べて、最も高い増加率を示したのはアフリカで、19.7%。 面積で最大の増加をしたのは欧州で996,000haでした。アジアは230,850 haの6.9%の増加でした。

・有機圃場が世界で増加していますが、農業全体(非有機と有機の合計)に占める有機圃場の割合はまだまだ極めて小さく、世界全体で0.85%でした(2008年は0.78%)。有機圃場の割合が高い地域は、オセアニアの2.82%、次いで欧州で1.82%、 中南米の1.37%で、他の地区はまだ1%以下です(北米は0.68%、日本は0.19%)(図表4)。
アジアの有機面積は、360万haで、2001年の8.7倍に増加しています。

・近隣のアジア諸国の有機圃場面積では、中国は1,853,000ha、インドが1,180,000ha、フィリピンが52,546ha、タイとスリランカが20,000 ha台、ベトナム、韓国、カンボジアが10,000 ha台、サモアが9,714ha、ネパールが8,059 haです(図表5)。
 日本の2009年の有機圃場面積(転換期間中を含む)は8817 haで、アジアの中でも有機圃場が極めて少ないことを指摘しておきます。

・日本は民間での有機農業の歴史も長く、法律に基づく有機制度が欧州についで世界で2番目に定められました。先進国で豊かな生活をし、環境問題に関心が高く、教育水準は高く、又子供達を大変大切にする日本で、その有機圃場がアジアの諸国と比較してもこれほど広まっていないことを海外の人々は不思議に思っているようです。

・日本では、認証を取っていない有機圃場があり、産直などで取引されていることを否定できませんが、それにしても余りにも諸外国に比べ日本の有機圃場が少ないと思われます。なお、中国、インド、韓国、台湾、フィリピン、マレーシアはそれぞれ有機食品の表示制度を施工しており、タイとインドネシアは認証制度を持っているので、日本の有機圃場がこれらの国の後塵を拝している責任を有機JAS制度そのものに転嫁するわけにはいかないと思います。
【3】地域別の作物別圃場の比較(図表6)
これら認証圃場では、どのような作物を有機的に管理しているのか? 地域別に特徴があるのかを調べます。
・1年生作物を栽培する圃場、多年生作物の圃場と恒久的な牧草地を含んでいます。恒久的な牧草地とは、耕作には適していない草原で、オーストラリア中西部の乾燥した草原や欧州のアルプスの山の草原、モンゴルの草原などで、有機的管理がなされている土地のことです。日本にはそのようなところはほとんどなく、またそこでの畜産業もほとんどありません。世界の有機圃場を見る場合、この恒久的牧草地を除外した有機圃場だけを対象に比較したほうが分かり易いと思います。又、国際比較をする場合には、広義の農業の中における畜産業の各国での位置付けを明確に意識することが重要と考えています。

1)アフリカでは、1年性と多年性がほぼ同じで、恒久的牧草地で有機的管理をされている土地は僅か26,128 haしかありません。野生動物が生息する草原は広大ですが、有機的管理の圃場の対象になっていないのではないかと思います。

2)アジアでは、1年生が78%と大きく、恒久的牧草地は17%です。

3)欧州は、1年生と恒久的牧草地がそれぞれ400万ha強で、11%の100万haが多年生です。

4)中南米は、恒久的牧草地が530万haで有機圃場全体の62%、1年生は255万haです。

5)北米は、1年生144万haで54%、恒久的牧草地が114万haで43%です。

6)オセアニアは極めて特徴的で、恒久的牧草地が1175万haで全体の97%で、有機畜産が大変重要な役割を担っています。日本と比較のしようもありませんが、それでも1年生は40万haで、日本の5倍もの1年生作物の有機圃場があることに注目する必要があります。



〔次回蕎呂紡海〕