高橋 勉
「オーガニックは楽しい!」――JONAは長年このフレーズを発信し続けてきました。しかし、どうして楽しいのか? それはオーガニックが、人や環境、社会に対する想いをみんなで共有しながら楽しい未来を目指す取り組みだからです。
 楽しい未来の第一歩は「循環」です。例えば、食品残さは捨てればただの廃棄物ですが、発酵させれば堆肥となり次の農産物を育んでくれます。食品残さに限らず、身近にある有機物は、少し手を加えるだけで廃棄物ではなく資源になり得ます。物質を循環させ、ワンウェイ製品を減らしてくオーガニックの取り組みは、エコロジカルであると同時に経済性も兼ね備えています。
 そして次の段階になると、新しい出会いが生まれます。様々な物質が循環すると、そこに関わる人と人とのつながりが生まれ、網の目のようにネットワークが広がっていきます。こうしたネットワークが広がる過程で、作る人と食べる人との交流と理解が深まっていくのもオーガニックの醍醐味と言えるでしょう。
 物質が循環することで、人と自然、人と人とがつながっていく――JONAは設立30年を経過しても変わることなく、オーガニックで楽しい未来を目指し続けたいと思います。これからも、みなさんと一緒に。
井村 辰二郎
皆様ご存知の様に、みどりの食料システム戦略法も制定され、日本のオーガニックも新しいフェーズに入っていくのだと思います。
消費者の行動変容(有機農産物の積極的な購入)が起こるのか?マーケットの伸びは?
会員の農家や食品メーカーの皆様も気になる事だと思います。
私も有機農業を始めて25年、改めてオーガニックって何だろう、自分はなぜ有機農業をしているのだろうと考えるようになりました。
みどり戦術では2050年には、有機農業の耕地面積で25%まで増やすKPIを掲げます。
有機農業が当たり前に、消費者が気軽に買える時代になるのかもしれません。私は、有機農業を始めるときに、①持続可能性②生物多様性、この2つに資する農業を理念に掲げました。オーガニック的な社会は、間違いなく広がっていくと信じています。
私は、残りの時間を、生物文化多様性をハイライトして、理念を追求して行こうと思います。
オーガニックマーケットも厳しい価格競争の時代に入っていくかもしれません。
外部環境にブレことなく、多様な価値・個性のある農業を行って行きたいと思います。
植松 勝久
醤油とオリーブ油を製造している㈱ヤマヒサの植松です。
「オーガニック」という言葉はうちに見学に来られた外人さんと通訳の人が何か言っとるなぁ、と当時中学生だった私(1987年頃)。それ以来うちの醤油作りの中にオーガニックが入り、無農薬・無化学肥料でオリーブ栽培も行い、当時学生だった私は土日になると畑で草抜きや害虫駆除を渋々やっていました。
大学進学で島から都会に出ていろいろな刺激を受けましたが、小遣い欲しさに手伝っていた実家での醤油造りやオリーブ栽培が価値のあるものだと感じたことから家業を継ごうと思い、現在に至っています。
近年、SDGSなどで「持続可能性」が話題になっていますが、ようやく時代がオーガニックの概念に近づいてきたのだと感じています。
もっとも最近では疫病や紛争の影響で経済が混乱して「それどころではない感」も漂っていますが、これから先は更にオーガニックの考え方が求められる時代になると思っています。
大野 満雄
最初に父親(88歳)が農薬を使用しないで米作りを始めて36年がたちます。
改めてそのルーツを思い返さないとこれからの道が、開けないのではないかと振り返ります。昭和の時代に国の基盤整備事業で圃場を区画化し、湿田だった圃場でも米以外の作物もできる乾田化をしました。そんな中で田畑輪かんで畑作物の後の水田には、雑草が少ないことを着目してのスタートでした。
地域の方からは、変人扱いの視線を感じつつ、対話を繰り返していくうちに分かってくれる人も現れました。また販売するにあたっても米つくりの真摯な思いが繋がっていく原動力だと感じました。
jonaの認証を取り、そして緑の食糧戦略システムの政策の追い風中で有機栽培を増やしていくことがこれからの使命と考え、先人から伝わったこの農地をきれいな形で残せるように尽力できればと考えています。
大山 利男
JONA設立30周年おめでとうございます。
30年前を振り返ると、自分はちょうど大学院を出て就職した頃でした。まだ日本では「有機」の明確な定義や公的基準がなく、曖昧な無・減農薬(化学肥料)等の節減表示も氾濫していました。後に有機JAS制度が施行されますが、JONAの30年の足跡(実績と経験)はつねに国内の有機認証分野を先駆するものであったと思います。
いま、JONAは30周年という節目にありますが、つぎの30年を見据えるとさらに大きな節目にあると思います。農林水産省「みどり戦略」が設定した有機農地面積(25%、100万ha)の目標年がほぼ30年後の2050年だからです。有機シェアが現状の0.5%から25%に拡大すれば、有機認証の作業量も50倍になるという乱暴な机上の計算ができます。そう単純ではないと思いますが、有機認証の作業量が爆発的に求められることは確かです。検査・認証手続きも質的に変化するでしょう。つぎの30年は、有機業界にとって大きな構造変動が必定であり、JONAはさらに重要な役割を担うことが期待されると思います。微力ながら応援していきたいと思います。
岡田 征剛
JONA設立30周年おめでとうございます。いまや日本最大会員数を抱えるJONAと成長された事を、創設時より関わらせて頂いた1社として光栄に感じるとともに、誇らしくまた嬉しく思います。日本のナチュラル&オーガニック市場の真の拡大はまだこれからかもしれませんが、いよいよ日本の製品が海外へ向けて紹介できるというステージが整いました。もう30年、まだ30年・・・それは昨年開催されたサッカーワールドカップでの日本代表の活躍にも言える事です。Jリーグという国内サッカーリーグ設立から30年、日本のサッカーが世界の競合国と同等に戦えるまでに!30年という時間軸の偉大さではないでしょうか?
これからのJONAへの期待、オーガニックへの期待はまさしくサッカー日本代表と同じく、国内外で認定されたJapan Organicが、一人でも多くの人達に認知され世界中で喜んでもらえる事。また世界中のオーガニックが認定基準に合意し、いつかボーダーレスに認められる日が来ること。様々な食糧問題の一助となるようなサステイナブルなスキームに関与出来る事、そして健全な地球と大地を次世代に残す一助となる事ではないでしょうか?引き続きJONAを宜しくお願い申し上げます。
倉又 寛芳
私にとってオーガニックとの出会いは、まさにJONAでした。
2000年 有機JAS制度がスタートしたその年、JONAに入りました。
それまでは小売業界で食品の販売にたずさわってきましたが、当時売り場に有機食品を見ることはほとんどありませんでした。
現在は、食品売り場に行くと、多くのJASマーク付きの食品を見ることができるようになりましたが、認証制度が始まって22年経過した今でも、オーガニック食品の占めるシェアは、欧米に比べて、まだまだ低い状態にとどまっています。
この状況を打開し、売り場に有機食品があふれるように出来るのは、1993年に設立し、日本の有機認証を牽引してきたJONAの責務だと考えます。
その為、JONAと会員が一丸となってJONA認証の信用を高め、日本にオーガニックをライフスタイルとして定着させていって欲しいと願っています。
つまり、私の「オーガニックへの期待」とはまさに「JONAへの期待」となります。
澤浦 彰治
私とJONAの出会いは、まだ東京駅の近くに事務所があった頃で有機JASが始まる前の黎明期でした。当時はまだ、「有機農産物とORGANICは違う」という時代で私たちの農場は農林水産省のガイドラインに沿った形で蒟蒻芋の有機栽培をしていて、“認証”という言葉や仕組みを理解していませんでした。その後2000年に有機JAS認証が始まり、その秋の蒟蒻芋の有機検査に今の事務局長の高橋さんが見えたことも懐かしい思い出です。
 試行錯誤しながらの有機蒟蒻芋生産と、有機蒟蒻製品などの有機食品は当時はまだ小さな市場でしたが、徐々に理解者が増え私たちの有機蒟蒻も今では多くのお客様に扱っていただけるようになり、国もみどりの食料システム戦略を打ち出し、これから有機農業を推し進めていく方針を出し、マイナーだった有機農業がメジャーになってきました。
 有機農産物や有機加工食品が多くの人に選ばれる時代になった中で、JONAは設立の理念からブレず日本の有機をリードしてもらいたいと期待をしていますし、私も理事の一人として少しでも力になれたらと思っています。
 設立30周年まことにおめでとうございます。
関根 雄二
 有機農産物を大幅に増やすには、国産有機農業がたくさん儲かる仕事にする必要があります。第一世代の有機農業者は理想に燃えて取り組んでいますが、期待する利益が少ない為、有機農業後継者は減る傾向です。市場外流通中心の有機農産物流通は農家手取りが上代価格の5割程度あり、慣行の市場流通の農家手取りは上代価格の3割程度で、介在者が多い分、農家手取りは減ります。これからのオーガニックは市場外流通中心でロジスティックの改善、消費実態に合わせた手間いらず商品の開発、より味や鮮度を重視した生産と流通に変わります。輸入した化学肥料や化学農薬に頼る慣行農業から、国産で賄える有機農業を拡大して、サステナブルな環境や農業を温暖化防止に役立てます。
オーガニックの農産物や環境は地球規模の課題解決の一助になり、より安全で安心な農業と農産物サプライチェーンの基本になり、国民の健康・福祉・安全保障に貢献出来ると確信します。
出口 裕起
会員の皆様はもちろん多くの方々のご支援と活動により、国内オーガニック市場が広がってきたことを実感します。生活者の方々にとって食の安全・安心を選択する上での目安が有機認証制度です。生産者やメーカー側は認証取得によって付加価値が生まれますが、最終ユーザー様にその農作物や加工食品が生まれるまでの背景や想い、そしてその商品自体の価値と取り組み価値をもっとお伝えすることがこれからは大切になっていくのでは。非接触や無人化、省人化はどの分野でもこれから推進されていきますが、身体をつくる「食」こそ、もっと多くの情報提供に努めていきたいと思っています。オーガニックもマクロビオティックも同じ考え方となり、大きな意味で健康で在り続ける生活術です。身体と環境と社会がこれからも健康であり続けていくためにオーガニックを更に広げていく事業活動に取り組んでまいります。
西 一登
弊社では、JONA設立の当初から有機栽培を行ってきました。
昨今、お茶の業界では国際的な取引の増加から、有機栽培のお茶の取引量は年々伸びており、これから先もその増加が期待できます。
有機栽培を始めた当初は「有機栽培を行うと、周囲の畑が荒れる」と敬遠をされておりましたが、永年作物である茶畑においては、その中で生物の多様性が生まれ、食物連鎖で自然とバランスが整い、持続可能な生態系が生まれます。 しかし、その生態系が生まれるまで多くの時間が掛かり、その間に被害も発生してしまうため断念する人が多かったのです。
最近霧島市では有機栽培技術の進歩も合わさって、有機栽培に理解が得られるようになり、周りの農家も有機栽培に取り組むようになりました。
東京オリンピックで日本の有機JAS認証品が満足にPR出来なかったことは残念ですが、世界的にも信頼の厚い日本の安心・安全な有機栽培品を普及させていくのは、まだまだこれからだと思います。
野田克己
私の「有機農業」との出会いは、1974年の秋、故有吉佐和子さんの小説「複合汚染」でした。「朝日新聞」の連載小説で、当時大学生だった私は強烈に引き込まれました。
この小説は、「高度経済成長」によるバラ色の未来に浮かれていた時代に、農薬と化学肥料が農業生産と生態系に与える深刻な影響を明らかにし、その矛盾を超える具体的な手立てとして「有機農業」を一気に、全国に紹介してくれたのです。加えて、そこに提示された世界観は、私たちのライフスタイル全般の見直しとオルタナティブ、つまり、食品添加物や合成洗剤に含まれる化学物質の人体と生態系への悪影響から、生命を育む第一産業の大切さまでを包含していたのです。
このインパクトが有機農業第一世代の生産者だけでなく、食の安全を求める消費者運動や流通団体を全国で生み出した、と言って過言ではありません。
そして、「有機農業」という言葉が日本に生まれて35年後の2006年。人びとの長い、長い運動は「有機農業推進法」としてひとまず結実しました。ここに有機農業の理念が国の政策として定義され、それを推進すべき国や地方自治体の責務が書き込まれたのでした。
さて、有吉さんの小説からほぼ50年、「有機農業推進法」から15年余。
「有機農業」には、日本の農業生産と地域生態系を守るエースとして、また、食の安全を守る代表的なオルタナティブとして、その伸び代がまだまだたっぷりあります。
有機農業の豊かな世界を語り継ぎ、希望をもって共感の輪を広げましょう。ときどきは国や自治体の尻をピシッとたたきながら…。
林 善博
JONAが30周年を迎えるにあたり、理事職を拝命している重責とともに、微力ながらも運営に携わる喜びを感じています。
私は、美味しいオーガニック味噌を、より多くの世界中の人々に提供させて頂く事をライフワークとして取り組んで参りました。日本の味噌製造業の規模は年産40万t、うち有機格付申請の対象はわずか4,000t弱、つまりオーガニックは全体市場の1%未満というのが現状です。日本の農業を俯瞰しても、オーガニック農業の耕地面積は1%未満。「みどりの食料システム戦略」実現への道筋は、白書発刊2年が経過しても見えてくる気配はありません。
オーガニックの世界では、「オーガニックは安心安全。慣行農産品や加工食品をおやめなさい。」というメッセージしか発されていないように思います。市場全体の残り99%を占めるオーガニックを知らない消費者に向けて求められる事は、真に美味しいを実現する技術革新、コストダウンを目的とした生産性向上、そして何よりも、オーガニックに携わる人々の崇高な信条を消費者の皆様に語り、共感いただく、以上が進むべき道であると考えます。
山口 真奈美
私たちは様々な命が存在する地球という惑星で暮らしています。自然環境と人間とは絶妙なバランスを取りながら歴史を刻んで来ましたが、今、気候危機や環境社会的課題が山積し、気候と環境がティッピング・ポイント(転換点)を超える非常事態を迎えているのも事実です。
生きとし生ける存在を認め、自然の摂理を大切に、大自然の前に私たちは謙虚に産業を営みながら、生態系との調和を実現させるために。環境への負荷をできる限り低減した農業生産である有機農業は重要な鍵となります。
また、当たり前のように過ごす事の出来る幸せな日々を、今も未来も継続していける、衣食住を満たす持続可能(サステナブル)な道筋の基盤にオーガニックがあることで、SDGs(持続可能な開発目標)が目指す、誰一人取り残さない社会変革の実現にも繋がることでしょう。
30周年という輝かしいご発展を遂げられたJONA関係者の皆様の情熱に敬意を表し、さらなる飛躍を祈念いたします。