世界各国のオーガニック理念に基づく基準や基準設定の理由を比較検討すると、幾つかの基本的な要素に集約することが出来ます。

有機農業とは土づくりの重視、化学肥料・農薬、食品添加物などの使用禁止、生物多様性の保持、自然環境の有効利用、GMO技術や放射線の使用禁止、計画に基づく有機生産、生産諸条件の確認、流通過程での有機一貫性の確保などです。

1. 世界の有機圃場IFOAM とFiblが2009年の年末までに世界160カ国から集めた有機圃場(有機転換中を含む)の調査結果を本年2月に発表しました。2009年の全世界の有機圃場面積は、3,720万haです。

注)有機圃場とは有機的な管理がされている圃場のことで、認証制度のない国や地域が多いため、認証の有無は言及していない。世界各地で統一した方式に基づく公式な有機圃場面積が推計されていないので、各地域、各国から信頼性の高い情報を集め、FiblとIFOAMがチェックして纏めたものです。

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【1】過去10年間の世界の有機圃場面積の増加(図表1,2)

1)直近の2009年末の面積3720万haは、統計を取り始めた1990年時の1100万haの3倍以上、2001年の1740万haの2.14倍になりました。停滞した2005年を除き、有機圃場が世界で広がってきていることを示しています。2009年は2008年より200万ha(6 %)増加しました(図表1)。

2)各地域の有機圃場の経年的推移は、欧州、北米、アフリカが継続的に増加しており、オセオニアが2004年以降やや停滞気味、中南米は2002年から2006年の間は減少しましたが、その後急激に有機圃場を拡大している。アジアも有機農業が普及してきています(注;アジアの2004年の400万haは、異常に高い数値であり、推計方法に問題があったためと思われます。)(図表1)。

3)前年と較べて、最も高い増加率を示したのはアフリカで、19.7%。 面積で最大の増加をしたのは欧州で996,000haでした。アジアは230,850 haの6.9%の増加でした(図表1)。

4)世界と日本の有機農業の経年的増加を2001年を起点としてグラフ化すると、2009年は世界で2.14倍に対し、日本の有機農業は増加してはいますが1.7倍に留まり、世界の趨勢よりも停滞していることを如実に示しています(図表2)
(日本の有機圃場の推移は、農林水産省へ報告されている国内の有機JAS格付け数量の推移で代替しました。圃場面積は2008年まで集計されていないためです。)

【2】地域別の有機圃場面積(図表3,4,5)

・2009年末時点の地域別の有機圃場面積は、オセアニア(主にオーストラリア、ニュージーランド)が1220万ha (全体の32.6%)で1番多く、次いで欧州が930万 ha (全体の24.9%)、中南米が860万ha(全体の23.0%)、アジアが360万ha(全体の9.6%)、北米が270万ha(全体の7.2%)、アフリカが100万ha(全体の2.8%)です(図表3)。前年と較べて、最も高い増加率を示したのはアフリカで、19.7%。 面積で最大の増加をしたのは欧州で996,000haでした。アジアは230,850 haの6.9%の増加でした。

・有機圃場が世界で増加していますが、農業全体(非有機と有機の合計)に占める有機圃場の割合はまだまだ極めて小さく、世界全体で0.85%でした(2008年は0.78%)。有機圃場の割合が高い地域は、オセアニアの2.82%、次いで欧州で1.82%、 中南米の1.37%で、他の地区はまだ1%以下です(北米は0.68%、日本は0.19%)(図表4)。
アジアの有機面積は、360万haで、2001年の8.7倍に増加しています。

・近隣のアジア諸国の有機圃場面積では、中国は1,853,000ha、インドが1,180,000ha、フィリピンが52,546ha、タイとスリランカが20,000 ha台、ベトナム、韓国、カンボジアが10,000 ha台、サモアが9,714ha、ネパールが8,059 haです(図表5)。
 日本の2009年の有機圃場面積(転換期間中を含む)は8817 haで、アジアの中でも有機圃場が極めて少ないことを指摘しておきます。

・日本は民間での有機農業の歴史も長く、法律に基づく有機制度が欧州についで世界で2番目に定められました。先進国で豊かな生活をし、環境問題に関心が高く、教育水準は高く、又子供達を大変大切にする日本で、その有機圃場がアジアの諸国と比較してもこれほど広まっていないことを海外の人々は不思議に思っているようです。

・日本では、認証を取っていない有機圃場があり、産直などで取引されていることを否定できませんが、それにしても余りにも諸外国に比べ日本の有機圃場が少ないと思われます。なお、中国、インド、韓国、台湾、フィリピン、マレーシアはそれぞれ有機食品の表示制度を施工しており、タイとインドネシアは認証制度を持っているので、日本の有機圃場がこれらの国の後塵を拝している責任を有機JAS制度そのものに転嫁するわけにはいかないと思います。

【3】地域別の作物別圃場の比較(図表6)
これら認証圃場では、どのような作物を有機的に管理しているのか? 地域別に特徴があるのかを調べます。
・1年生作物を栽培する圃場、多年生作物の圃場と恒久的な牧草地を含んでいます。恒久的な牧草地とは、耕作には適していない草原で、オーストラリア中西部の乾燥した草原や欧州のアルプスの山の草原、モンゴルの草原などで、有機的管理がなされている土地のことです。日本にはそのようなところはほとんどなく、またそこでの畜産業もほとんどありません。世界の有機圃場を見る場合、この恒久的牧草地を除外した有機圃場だけを対象に比較したほうが分かり易いと思います。又、国際比較をする場合には、広義の農業の中における畜産業の各国での位置付けを明確に意識することが重要と考えています。

1)アフリカでは、1年性と多年性がほぼ同じで、恒久的牧草地で有機的管理をされている土地は僅か26,128 haしかありません。野生動物が生息する草原は広大ですが、有機的管理の圃場の対象になっていないのではないかと思います。

2)アジアでは、1年生が78%と大きく、恒久的牧草地は17%です。

3)欧州は、1年生と恒久的牧草地がそれぞれ400万ha強で、11%の100万haが多年生です。

4)中南米は、恒久的牧草地が530万haで有機圃場全体の62%、1年生は255万haです。

5)北米は、1年生144万haで54%、恒久的牧草地が114万haで43%です。

6)オセアニアは極めて特徴的で、恒久的牧草地が1175万haで全体の97%で、有機畜産が大変重要な役割を担っています。日本と比較のしようもありませんが、それでも1年生は40万haで、日本の5倍もの1年生作物の有機圃場があることに注目する必要があります。

〔次回Ⅱ章に続く〕