序文
 3月11日の東日本大震災によりでご親族、ご友人を亡くされた方々、住居、店舗、田畑、工場、倉庫など生活の基盤に甚大な影響を受けた方々、さらに放射線汚染により被害を蒙られた方々に心からお見舞い申し上げます。

 地震は天災とはいえ、原子力発電所の未だに出口の見えない事故により、現代の最先端技術の脆さを図らずも強く認識しなければならないことになりました。
現代の先端技術は未開の分野を開き、極めて生産性が高いことは賞賛されるべきかも知れませんが、外部不経済や周辺分野への配慮あるいはその技術による自然や社会への影響の考慮が十分でないことが大きな盲点となっています。

これはハイテクノロジーを駆使する工業生産のことだけではありません。
現代の先進諸国の食品は、米国がリードしてきた現代農業、即ち主に農薬や化学肥料を使用し、大規模農場での単一作物の農産物や工場的生産の畜産物と、それに呼応して食品添加物、保存剤などを使用した大量生産による加工食品が主流となっており、人々の健康な生活や自然環境への脅威となっています。
更に遺伝子組換作物(GMO)が次の世代にどのような影響(自然生態系への影響や社会基盤への影響など)を与えるのか十分に検討されないまま推進されていることも大きな問題です。

 世界で飢饉に直面している数十億人の食糧の確保が国際社会の大きな問題であることを先進国日本の我々も看過することは許されません。
その原因は世界の総生産量が不足しているのではなく、先進諸国の過剰消費と廃棄される食物、増大する畜産物の生産と過大な消費、富の偏在と流通機構の不備などが大きな原因とも考えられております。

 アフリカ、インド、中南米などで化学肥料や農薬に頼らずない有機農業をIFOAM(国際有機農業運動連盟)が推進してきましたが、その成果はWHO、FAOなど国連の関連機構も認めるようになりました。

 有機農業は、欧米では1990年代より盛んになってきていることは周知のことと思いますが、アジアの諸国でもここ数年来、力強く発展してきています。
残念ながら、日本の有機農業は減じてはいませんが、微々たる伸びしか示していません。

その理由はどうあれ、世界の有機農業は現時点でどのように広がっているのかを本稿で紹介し、日本の現状とのギャップを理解していただきたいと思います。

(出典は主としてIFOAMとFiBL(スイス)の共同調査報告書(The World of Organic Agriculture)です。)]

本稿の概要は次の3章を予定しています。

Ⅰ章 世界の有機圃場
Ⅱ章 世界の有機食品市場
Ⅲ章 世界各国の有機食品制度

今回のホームページでは、世界各地域の有機的管理がされている農業用地(圃場)の面積、作物別の利用方法などを中心に報告します。なお、本稿では、有機農業の社会的意義(社会貢献)、有機農業の技術、有機農産物の特徴などについては触れておりません。そのようなトピックスは別に報告いたします。

順次更新いたしますので、お楽しみに。